写真や映像といた記録メディアが与える情報と僕ら受け手側に残る記憶の誤差については、修士の頃からの研究テーマの一つです。
時間がある時は適時リサーチをしているのですが、この本はその一連でまとめ買いした数冊のうちの一冊です。
この本では新聞やテレビといった主要メディアの流す情報がいかに不確かであるか、
且つ、なぜ不確かになってしまうか、といった報道の問題点を多角的に論じています。
非常に興味深かったのは「騙し屋スカッグス」という、実在する人物のエピソードの紹介です。
この人物、ジョイ・スカッグスは米国で「嘘のニュースソース」をマスコミに流し、「実際にそれを報道させる」事を活動とする人物です。
(違う意味で“メディア・アート”?)
一例として「裁判を自動化するスーパーコンピューターが開発された」というでっちあげの会見を設定し、
事実としてCNNのニュースで放映された、といった事例がいくつか紹介されています。
彼の活動の賛否はともかく、マスコミの流す情報の信憑性について一考せざるを得ない、重要な気づきが含まれます。
また全体的に、米国で9年間の記者実績のある著者が「取材」で得た情報をベースにして書いているのが文章の強度を支えていると感じました。
「取材」が大事なのだと感じました。
実体験や経験値の不足は、真の取材で補えるという事です。
キーワードは取材ですよ!
隠すマスコミ、騙されるマスコミ
小林雅一 著・文藝春秋