2010年1月30日土曜日

ビデオ撮影“ソロスタイル”について考える ver.2「ビデオカメラについて」

















引き続き、“ソロスタイル”撮影における機材の運用について考えたいと思います。
今回はビデオカメラについて。

前回「機材の運搬について」で記載したとおり、一人で運搬・運用ができる機材一式を考えた時に、やはり重要になるのがメイン機材である、ビデオカメラのセレクトです。

まずビデオカメラのサイズ(=ランク)ですが、画質はもちろん肩乗せENGタイプがベストですし、運搬の簡単さなら小型の片手ハンディカムがベストです(これがまた最近、一般家庭用と侮れない優れた性能になってきています!マイクなんかを工夫すればサブカメラとして意外と便利)。

ただ、やはり“ソロスタイル”としては汎用性が命。片手で持てるサイズで、工夫すれば放送にも耐えられるモデルがベストです。
テレビ業界などでは「デジ」と通称される中型タイプのビデオカメラがベストだと考えます。

次に、ビデオカメラの記録形式について。

ここ数年のビデオ撮影機器の流れとして「テープレス化」があります。
ビデオ撮影機器の記録フォーマットには長らく「テープ」が使われてきましたが、メモリーに撮影データを記録する形式が主流になりつつあります。

しかし、已然多くの現場でテープが使用されている理由の一つが「安心感」です。
メモリー式のカメラの場合、データ故の「消えてしまったらどうしよう」という不安は常につきまといます。
長期の保管は複数のハードディスクにバックアップを取ればとりあえずは安全として、僕が問題だと思っていたのは「短期的なスケジュールの中での「撮影→データ取り込み→データ消去」のフローの現実的な問題についてです。

例えば、連日朝から晩まで撮影を繰り返すようなドキュメンタリー・記録撮影の時でも、テープの場合は撮影済みのテープが手元にストックされていくだけで、スケジュールが空いてから取り込み・編集作業をすればよいので安心です。
しかしメモリー式カメラの場合、カード容量の関係でほとんどの場合は毎日撮影済みのデータをPCに読み込み、読み込みが終了したらメモリーを消去して翌日の撮影に望む、というフローになりがちです。場合によっては現場でデータをPCにコピーしてカードの内容を消去、撮影を再開…といった慌ただしい事になってしまいます。事実、僕が関わった仕事の別チームでこのフローでの無理が生じ、現場でコピーしたはずのデータが正しくコピーされておらず、すべてデータが無くなってしまった…というトラブルも聞きました。これは賠償問題になりかねない深刻な問題です。

以上の事を考えると、今回模索している“ソロスタイル”においては:

「連日の撮影が終わるまでカード内のデータを消去しないで済むように、ある程度のカードメディア枚数を個人で所有・運用できるかどうか」

が重要なポイントです。
つまり、DVテープ感覚で買い足しできる「安価なカードメディア」の採用、すなわちSDカード級のメディアへの対応が不可欠なのです。
これはすなわち、panasonicのメモリー式業務カメラ・P2シリーズやsonyのEDCAM EXシリーズは残念ながら不合格!※という事です。
(※あくまで僕が考える“ソロスタイル”において。組織的に動ける場合はバックアップにも万全を期せるでしょうし、単尺で「絵作り系の映像を作る時にはよいカメラだと思います。ただ、1枚10万円するカードで1時間しか撮影できないので、ソロでの汎用的運用は難しいです。カードのレンタルも1日数千円しますし、取り込みにも撮影実時間近くかかるし…)

以上を考慮し、今日の“ソロスタイル”で選択するビデオカメラの記録フォーマットとしては「AVCHD」がベストだと思います。
AVCHDとは最近の民生用ハンディカムとしても、ほぼ規格統一されてきたフルハイビジョン形式です。内蔵HDD、およびメモリーカード類の安価なカードで比較的長時間録画ができる、MPEG4系の圧縮を使った記録フォーマットです。
P2、EDCAM EXといった従来メモリーカムの圧縮はMPEG2ですが、画質とデータの圧縮効率(キレイな割に、データは軽い)を考えるとMPEG4に軍配があがります。
となると…

候補となるカメラは以下2つの業務用・中型AVCHDカメラです。

・panasonic AG-HMC155

・sony HXR-NX5J














AG-HMC155はメモリー式カメラ市場を牽引してきたpanasonicが展開している業務用の中型カメラ。
SDの時代の名器中の名器、DVX-100から脈々と受け継がれた秀逸な設計が生きています。
レンズは光学13倍ズームとそれほど寄れないのですが、ワイド寄りを重視&軽量化を優先した設計思想と考えれば問題ありません。
ボタンの配置やボディバランスなど、非常にいいです。sonyにも見習って欲しい優れた設計が随所に感じられます。

ただ、本当に惜しむらくは2点、どうしても納得のいかない点があります。
1.液晶画面が超低解像度
…フルHDの時代に、なぜDVX-100時代と変わらないスペックの液晶画面を搭載しているかが本当に謎です。
断言しますが、フォーカスなどまったく分かりません。
このあいだ同解像度の液晶モニターを搭載したpanasonic HVX-205Aというカメラを使いましたが、フォーカスはほとんど被写体との距離で図ってました…
(この距離なら2mくらいだな、という具合に…)
フォーカスアシスト機能(液晶上でピントが合っている箇所の輪郭が強調表示される)が付いていますが、そんな余裕があったら液晶を変えればいいのに…焼け石に水です。

2.同時バックアップができない
…「安価なカードメディアであるSDカードが使えるのが重要」と言いつつ、SDカードの信頼性はそれほど高くはありません(デジカメのデータが消えた人も多くいるのでは?僕も数回経験があります)。
となると、バックアップ機能が重要です。例えばSDカードを2枚入れて、2枚に同時に同じデータを記録する、あるいは外付けのメモリーユニットを搭載できる、といった配慮が必要だと思いますが、この機種には残念ながら、その配慮がありません。


一方のsony HXR-NX5Jは、昨年11月にInterBee2009で発表され、早くも今月1月に発売されたsonyの新しいライン「NXCAM(AVCHDの業務ライン)」の一号機になります。















こちらは非常に完成度が高いです。SDカードに加え、別売りのフラッシュメモリーユニット 「HXR-FMU128」によって同時記録が可能なので、万全を期す記録でも安心です(ちなみに、128GBで11時間記録可能)。
また、筐体の設計も業界に普及しているHDV業務機の従来機種、Z1JからZ5Jに続く設計を踏襲しているため、操作感に違和感がありません。また、液晶モニターは高精細で申し分なしです。
加えて、XLRマイク端子の設定の改良(LRのどちらか一報にだけXLRマイクを振り分け、片方には内蔵マイクの信号を記録する事が可能になった)とか端子類の充実とか(HDMI出力、HD-SDI出力、タイムコード出力)、かゆい所に手が届いています。
うーん、重量を除いては完全にHXR-NX5Jに軍配が挙がるでしょう。


というわけで、2010年度初春時点での“ソロスタイル”的ベストなビデオカメラは「sony HXR-NX5J」です!
近々業者さんからデモ機を大学にお借りして検証してみたいと思います。



といいつつ…
密かにその動向が気になる2010年のダークホース・ビデオカメラは…
「RED SCARLET」
(http://www.red.com/)








































レンズ交換式が2750$…!?
レンズ抜きの本体価格とはいえ、デジタルシネマカメラの雄・REDの普及版が25万円くらいで??

続く!