2010年5月11日火曜日

『デジタル対応引き伸ばし機』への夢


















(フォトグラム習作:1000円札をネガキャリアに設置し、印画紙に直に感光。 ※お札の複製は違法ですが、これは『複製』では有りません。悪しからず…)

本日、授業でモノクロ暗室実習を行いました。
担当助手だったので僕も暗室に立ち合ったのですが、学生達よりもテンションが上がってしまいました!
と言うのも、学部在籍時代にモノクロとカラーの暗室授業を受けて以来、実に10年ぶりに印画紙に写真を焼いたのです。水中から生まれるイメージに素朴に感動してしまいました…!

参加した学生達に聞いてみた所、驚いた事に「フィルムのカメラを使った事がない」という学生がいよいよ出始めました。デジタルカメラ・ネイティブ時代の到来です。
(もちろん、これは彼らの経験値が足りないという事ではなくて、僕たち大人が作った時代の反映です…)
しかし、印画紙を初めて使った彼らの反応は非常に好意的で、現像液に浸した印画紙から像が浮かび上がる瞬間の魔法は健在だと再確認した次第でした。

そう、光学機器を使って感光させて印画紙に焼くという写真の伝統的な工程はデジタル全盛の今でも続ける意味があると思います。
いくつかの理由があると思います。羅列すると:
・印画紙によるプリントの品質が高い(質感・発色も良く、耐経年劣化性もある)
・手作業が介在する為、作品的価値が生まれやすい
・文化的価値
などがあげられます。

残念な事に、印画紙や引き延ばしといった文化は、現在急速に無くなりつつあります。
つい先日もコダックがカラー印画紙の生産を中止したのは記憶に新しいです。

しかし、「フィルムや印画紙を保全しよう!」というだけでは、世界的なデジタル化への流れは止まりません(また、止める必要もありません)。橋渡しとなるようなイノベーションこそが必要です。
例えば、SDカードを引き伸ばし機に差し込むと画像データが光に変換されてイーゼルに投射され、従来通りにプリントが作れる『デジタル対応引き伸ばし機』があったらどうでしょうか?
(ラムダプリントを自分で作れるようなイメージですが、もちろん従来のカラーペーパー全てが使える構造を想定して下さい)

そうすればカラー印画紙の需要も一定量確保されます。自ずと、供給も復活します。
デジタルを使わないフィルム世代も、フィルムを触った事が無いテン年代の若者も、分け隔てなくデジタルと暗室を横断するきっかけになるかもしれません。
コダックもカラー印画紙生産を再開するかもしれませんし、「デジカメでしか写真を撮らない」若者達が、こだわりの一枚を作る為に暗室を使う―
などというニーズが生まれるはずです。

暗室が残ります。そして暗室が残れば、フィルム文化も一定量残るのです。

『デジタル対応引き伸ばし機』、あればいいなと本気で思います!
僕はデジカメで撮った写真を、印画紙にどんどん焼いてみたいと素直に思っています。
そしてそう思う若い人たちは、ぜったい多い。

このアイデアは機会を作ってメーカーさんにお話できればと思っています。
マジで!